装飾的なゴミ

オーナメンタルダズト

Xmas
冬ガーデンのサムザム感が、園芸家をクリスマスの飾り付けに駆り立てることになる。
秋にやりのこした冬ごもり作業がようやく終わり、我が植物たちに休息の日々がやってくる。
まぶたを裏返せばめくるめく華やかなシーズンの残像が。しかし、うすら寒い荒れ果てた姿もまたこころうつベランダだ。

宿根草は枯れ草とみまごうばかりとなり、秋に散った花びら、落葉樹の葉はベランダのスミで茶色と黄色のコロニーをつくっている。
室内や軒下に移された鉢が置いてあった場所にはベランダ版ミステリーサークルが出現した。さらに秋作業のドタバタでまき散らされた土砂や鉢のかけら。
落ちた場所が地面であれば、絵になるはずのこれら堆積物は、残念ながらベランダではかなりゴミに近い存在といえよう。
他の人なら目をそむけるこれらのゴミ近似物は、ベランダマンにとっては冬の到来を告げるフウブツシだ。いや、冬というより1年かけてここまで築きあげたもので、愛着ならびに風格さえ感じる。
ワタシはこのゴミ様物体に、愛をこめて『オーナメンタルダスト』という名前を差し上げた。
ミステリーサークル
ミステリーサークル。防水シートの上に出来てしまうとちょっとやそっとじゃ消えない。
11月につぼみがついたものの、一向に咲かない『あかずのバラ。』
それでも枯れ庭にともる希望だ。

開かずのバラ
大掃除シーズンを迎えて悩ましいのは、このオーナメンタルダストの処置である。
常識的な園芸書と、ホームキーピング関連書に従えば、こういうものはコマメに掃き捨ててしまわねばならない。害虫、病原菌などの悪の巣窟になるので、庭の平和を守るためには、すみやかに撤去すべきであると。
一方エコロジカルな園芸書では、庭の堆積物は捨てるべきではないとしている。悪の巣窟ではまた、庭に有益な虫や菌も冬越しをしているので、放っておけば、自然に善悪のバランスがとれるというのだ。
庭のスミに空きカン・瓶を集めて多孔質のアパートを造り、善も悪も手をとりあって増殖しやすい環境を提供する方法まで解説されている。
多分ジョークではないと思うが、ガイジンの書いた本なので、どうであろうか。
 
自分自身冬眠にはいりそうなベランダマンが、共感を覚えるのはもちろん後者の意見だ。
たかだか40ヘーホウメートルのベランダでも、掃除となれば、さまざまな物をひっくりかえし、今年も増殖した鉢をちまちま動かさなければならない。
ヒビの入ったいくつかの鉢は割れるだろうし、2日後には必ずや腰痛におそわれるであろう。年をとるとなぜ筋肉痛は日を置いて現れるのか。そこまでしてこの暖かそうなオーナメンタルダストを排除する必要があるのだろうか。
第一あまりにクリーンな環境というのも疑問である。複雑な菌と昆虫の世界をこわさずに、弾力のある庭を作っていくほうが、きっと賢明な選択なのだ。
そう!掃除をしないのはさぼってるんじゃないんだね。
庭の隅に庭から掘り出されたもえないゴミを集めて、菌と虫のアパートを作る。
見た目が悪い場合はツル性の植物などで被えばよい。

しかしコンピュータのマニュアルにすらジョークを加える人種だ。英語マニュアルを苦労して翻訳したらジョークだった時の脱力感たらない。


心を決めてお茶をすすりながら、窓から庭を眺めるうちに「でもやっぱりミステリーサークルだけはちょっといただけないかな」と思う。
しかし、人間の不思議な能力のひとつ「のばしのばしにしていた掃除を、一旦始めると止まらない力」が発現して、ミステリーサークルだけのつもりが、気がついたら徹夜で全部掃除してしまった、ということになったら大変だ。
それにほっておいても、来年の春に「バラを見にきませんか」といってお客さんを呼べば、何人かは積極的にホウキをさがし始めるだろう。
それもまた自然のなりゆきである。

しかし、オーナメンタルダスト達はじわじわと排水溝に迫りつつある。
対策の見直しが求められる。


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